越知保夫「好色と花」(筑摩叢書 167) トップ 1970年7月25日初版第1刷発行

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「好色と花」(筑摩叢書 167)越知保夫 著
筑摩書房発行1970年7月25日初版第1刷発行319頁サイズ 約19cm×13cm×2cm定価 800円ビニル表紙カバー付き帯付き
ビニル表紙カバー 幾分ヤケ、僅かに薄汚れ帯 了媾本体三方小口 幾分ヤケ。本体頁 幾分ヤケ、状態良好。

左翼運動から闘病生活を経てカソリシズムへ――昭和の一知識人としての絶望と献身の持続のうちに成熟した小林秀雄像を、美と信の側面から掘り起した卓異の「小林秀雄論」「近代・反近代」ほか「好色と花」「道化雑観」等、人間の全体性回復への希求を秘めた不抜の遺稿集。筑摩書房800

【目次】
序  中村光夫
1小林秀雄論近代・反近代小林秀雄の「近代絵画」における「自然」ルオー
Ⅱルウジュモンの「恋愛と西洋」を読む「恋愛と西洋」に対するサルトルの批評について「あれかこれか」と「あれもこれも」 ダーシーの「愛のロゴスとパトス」を読む闘

【あとがき(山田幸平)】(部分)
孤独瞑想の文学者、越知保夫氏の評論集を世に送り出すにあたつて、その関係者の一人として望外の喜びにたえない。かえりみれば、昭和三十六年二月十四日未明、越知さんが昇天されてより、まる二年、遺稿集の計画が実行に移されてまる一年、多くの人の協力によつてここに漸くその実を結ぶにいたつた。
いかなる実生活の苦難に落ち入つても微笑を捨てず、痩身に鞭打つて、思索と表現に立ち向つた精神の軌跡がここに永遠に記念される幸運を私たちは噛みしめてみるべきである。
一部の人達には読まれていたとは言え、生前、広く一般に知られることなく終つた越知さんの業績は、数編の詩、書簡、及び二、三の訳業をのぞいてほとんどもれなく集成されたが、この一巻の書物の成立の事情を述べることは、そのまま越知さんの伝記と、その生涯をかけた文学的抱負をも明るみに出すこととなろう。
越知さんは、明治四十四年大阪姫島で生をうけ、キリスト教的色彩の濃い・家庭で成人した。東京の暁星中学に遊学中は、司祭職を希望していたほどの強い信仰を持つていたが、一高を経て東大在学中に、マルキシズムの激しい思想的洗礼を浴び、実践運動に没入して特高の縛に会い投獄された。その前後から身はすでに結核に冒されてはいたが、獄中さらに肉体を痛めるにいたつた。以来、越知さんの闘病生活と、自己の文学的鉱脈を探りあてようとする執拗な努力が続けられるのである。当時の精進は素晴らしく、友人の北錬平氏が頼みを受けて仏文研究室におもむくと、図書借出の名簿には、同窓の中村光夫氏とともに、もつとも多量の原書を借出していたと言……

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